用心棒(1961年 日本 監督/黒澤明)
これまで続けて時代物を見ていて、感想をひねり出していたのですね。面白かったのだけど、抜けの悪い感じが残っていて。話がスカッとしないという意味でなくて。この用心棒は抜けの良い感想が持てます。
痛快といわれてますけど、物語の進行事態はそんなにスカッとしないです。スカッとしないのに目茶苦茶面白い。三十郎が目茶苦茶強すぎて、三十郎の殺陣は全部一瞬で終わります。つばぜり合い的なことは一切しない。しかもほぼ全部引きなので強さがあんまり見えない。強いことをいきり立って表現しないのでさらに強く見える。
痛快時代劇にも拘らず、戦わずに逃れようとするシーンのほうが多い。その割には前半は三十郎が出ずっぱり。駆け引きも視聴者にはからくりを見せて(と云っても今から見るとかなり単純なもの)劇中では知られていない。サスペンスの面白さだ。
フレームの中に登場するもの全部で物語を表現するような作り方はこの映画でも健在で、犬が人の手首を咥えて歩くだけで街の印象を端的に表現しているのもそのうちの一つ。
斬られた人の扱いが怖かった。あまり見かけないやり方で、全然死なないのだ。54分辺りで亥之吉が斬った人がその場で立ちすくんで延々血を吹いている。それが背景になって物語が進む。でも話とは全然関係なく斬られた人はうだうだしながら血を吹いている。モノクロなので分かりづらいが血が大量だ。蛇口ひねって水が出るような勢いで出る。卯之助が死ぬシーンはメインなので物語に関係あるけど、こちらも全然死なない。TVの時代劇のような斬られてワーワー言って何時までも死なない、あれじゃなくて、もう死にたいのに死ねない苦しさと未練が溜まっているようだ。
演出上、目茶苦茶決まっているのでOKなんだが、ちょっとおかしいのが三十郎が居候する居酒屋が物語上必要な場所の真ん中にあって全部見通せる。バカみたいに都合が良すぎて漫画のようだ。
キャラクターも漫画のようで分かりやすい。唯一全くの謎なのが三十郎が何なのかだ。