【2015年5月15日公開】
上映時間105分
超短縮版
【2015年5月15日公開】
上映時間15分15
四年ぶりのドキュメンタリーで長編です。
また選挙なんですが、撮るか撮らないか迷いました。そもそもドキュメンタリー作家ではないし、ジャーナリストでもない。とりあえず選挙と政治家を知りたかったから観察した程度の発想しかなかったので二回も撮る理由が自分で見つからなかったのです。今でも理由は無いです。それでも撮ろうと思ったのは四月はヒマになるだろうと予想したからです。実際依頼の仕事をしていたのは2月頃だけでした。四月はこういうことをしたいから空けて欲しいと相談したからでもあります。
撮ると決めて、HDVカメラのZ1Jの最後の奉公とかまで決めたのに、撮影に入る直前にカメラ部分が壊れ、真っ暗しか撮れなくなってしまいました。音はRECできるのです。その前にスチルカメラも壊れていました。どちらもCCD部分が壊れたんじゃないかな。これまた最後の購入というか、奉公と思ってEOS 6Dを、最後が6Dかよ!ですけど、自分で買えるのがこれだったの仕方が無い。EOS kissで劇場映画を撮ってる人もいるのでそれよりは機材が良いぞとか自分に納得させました。結果としてさらに投資することになるのですが。
ネットでDSLR(Digital Single Lens Reflex camera)で映像を撮ることについて軽く調べて自分でも考察しつつ。多分、ビデオ専用カメラで撮るようには出来ないだろうなとか、そんなにDSLR万能じゃないよなとか思いつつ、今はこれしか手元に無いのだからと工夫を模索する。画質はともかく、操作性に関しては諦めるほか無い。手元にアイリスもゲインも音声レベルダイヤルも無く、白もさっと取れない。三脚立てて照明きちんと当ててじっくり撮るなら問題ないと思う。しかし僕は日陰から日向へ何時走り出すかわからない人を撮りたいのだ。天候なんて気にしていられない。後述するが雨が降る中でも撮影だ。対象と自分の間にはげのおっさんがひょっこり登場なんて日常だ。つまり撮影に対して全くウェルカムで無い状況で撮るのだ。いつだったか三脚の脚を全部伸ばさないのは素人という書き込みを見たが、素人上等だ。そもそも素人だが、三脚の脚を伸ばせないことなんで日常茶飯事だ。
ということで、操作性についてはビデオカメラではないので仕方が無いのだが、スチルカメラとしても面倒くさいなと思いました。AFでピントが合うまでの時間も長いです。これならマニュアルのほうが早いとは言わなくても納得して合わせられる。
問題なのは音。レベルとかモニターとかどうするんだと思ったらレベルもメニューの中からダイヤル回して選んで更に選択する方式でした。とてもその場でチェックするにはイライラしてしまう。ハイエンドスチルカメラならこうではないのかもしれない。まあ、あえてDSLRにビデオカメラとしての能力を要求しているので無茶言ってるのはわかってるのですけど。
モニターに関しては機材選びの時点で失敗した。6DはREC中にモニターできないのです。RECしているときの画面のレベルメーターしか確認できるものは無いです。DSLRでムービー撮影に5Dというのは単に画質だけではないんだ。ということで音は感でチェックです。しかしマイクだけは用意したほうがいいのでRODEの安い奴をつけた。安いだけあって無いよりマシ程度だが、これも音質以外の他人に対する見た目の効果もある。DSLRにマイクが付いていることで、スチル以外のものを撮っていることをアピールしやすい。しやすいだけで確実に出来ているものじゃない。
少し遠目やアングルを変えたり、低い位置でキープする為に一脚を常備することにしました。既に持っていたDVカメラ用のものにやや大きめの自由雲台を付けています。スタビライザーの付いたものも検討しましたが、レンズが変わったら使えなくなるだろうと想定したので購入しませんでした。事実そのようになったので今後も使わないと思う。
実際に選挙運動期間に入る前に追加するべきものを洗い出す為に候補者の行動をちょいちょい撮りに行っていました。そこで追加したのはバッテリー2つと64GBのSDカード、150-500mmの望遠レンズです。
バッテリーは映像撮影だと全くもたない。純正ですら厳しい。追加購入したのは互換バッテリーだった為にさらに持たなかった。スチルならそうでもないかな。これに関しては充電チャンスを作って使いまわす工夫が必要でした。
SDカードに関しては32GBでも良かったが、今後の長尺対応を含めて64GBにしました。
レンズは候補者に近づきすぎても撮りづらいし、何度か車道の中央がベストポジションだったことがあり、それならばもっと引いて撮れないかと思ったのでSIGMAの50-500mmの望遠レンズを購入した。こうやってどんどん出費がかさんでいったのでした。50-500mmはこれまでもお寺の屋根の狛犬などが全く撮れなかったものを撮る事にも使えるので、これ以外にも利用できると踏んでのことです。実際に撮ってみると望遠の画角と質感は自分の中では興味深く感じ、広角のいかにもケレンミのあるものより追求してみたいと思いました。しかし、自分の体力ではこのレンズが持って歩ける(文字通り歩くのですよ。走ってもいました)限界です。
大体道具が揃ったので、こつこつ撮ります。今回はどう撮るのか全く漠然としていました。もう単純に選挙を知りたいというのは前回やったので、違う見方をしたいと思いました。ちょうど、選挙対策部隊にも関わってほしいと云われたので、ネット関連の担当として軽く関わることとし、実際は自分のビデオのついでに写真撮っただけですが、ある程度入り込んで、また、選挙以上に候補者の行動を気にしながら撮りました。本当に気にしていただけでしたな。
前回より話を聞くこともしました。インタビューを入れてしまうとそれだけで尺を取られてしまうので、聞いたことを気にして撮ることで視点を変えられないかなと。見る人には全然わからないだろうけど。
撮り方は生真面目にとにかく張り付くだけです。それでも寝坊したり、街宣車の中で寝たり、RECボタン押してなかったり、全く撮らない日が続いたりもしていました。かなりぬるい取材でしたね。全然真面目じゃないね。
正月三が日は降雪が酷く、絵としてはかなり厳しい状況に見えますが、僕は屋根を探して撮っていたのでそんなにしんどくは無かったんです。寒かったですけどね。
選挙運動期間中前半二日は雨が酷く、天気が読めない状況でした。三日目だったかの大雨は本当にこのまま選挙期間中は雨なのかと諦めるくらいの降り様でした。結構選対メンバーと打ち解けてきた感じだったので随分とカメラの心配をされました。気持ちは大変嬉しかったです。でもあんまり撮影する人が前面に出てきちゃうのは良くないんだよね。具体的には雨はカメラにハンドタイルをかけることで防ぎました。
少し問題も発生しました。選挙運動期間中に候補者が車を降りて握手するのですが、その折に僕も付いていって相手の肩越しに候補者を撮るのです。候補者が降りる場所は当然決まっていないので、突然降りるんです。その後でしか反応できないのでスタートは当然遅れます。遅れてスタートしたのに候補者を追い越して相手の背後まで回りこまなくてはならないので、これが中々しんどい。四年前は対応できましたが今回は限界が来ました。腰を痛めたのです。これを書いている2015年5月9日にはほぼ治っていますが、開票日以降数日間は辛かったです。
もう一つ。この降りて撮ることで、カメラが相手を向いてしまうことがあるのです。撮影したかどうか無関係に相手にとっては撮られたと思うのです。それだけでなく、撮られた!ネットで公開される!個人情報を伴って!何故か自分の嫌なこと書かれて!を瞬時に想像するのです。そして、「カメラがあるなら握手をしない」と握手を拒否されるのです。
これは自分の意図しない事であり、候補者が握手できなければ僕が撮影する意味もなくなってしまいます。
そこで、降りて握手する場合は極力撮影しないことにしました。それで後半は車から降りたり、車内の絵が多くなっているのです。ちなみに車中からカメラを向けていることを知られるのもアウトです。
個人情報云々やプライバシー保護というのは、以前に若年層就職支援施設のビデオを撮影した時にも強く言われているので今更感がありましたが、撮影しようとすることで、撮影できない状況が生まれるなら撮らないほうが良いので、そこはこちらで工夫することにしました。先に書いたように撮るものを変えることです。
撮影データは毎日パソコンへコピーして日付ごとにタイムラインに並べておきました。SDカードが二枚しかないのでやりくりが必要だったことと、それなりの尺があるとコピーも時間が掛かるからです。選対としての作業としてスチルを提供することも理由の一つです。
編集するにあたっても先にタイムラインに並んでいると気持ちの上で作業に取り掛かりやすいのも理由ですね。
編集方針などは撮りながら決めました。方針なんて大層なことは無く、誰か中心になる人を作ると撮りやすいのです。今回だと本人以外ですね。撮ってるときに決めた人と、編集してるときは変わっています。それと振りとオチは作るようにしました。様々な振りとオチが繰り返されます。
今回もまじめな選挙、普通の選挙を見ため上は撮りたかった。僕は政治家に対する批評や批判より、政治家や政治を気まぐれに悪く言う人たちを批判したいのかもしれない。皆政治家を悪く言うのにこういった政治や選挙に関する何かを作ると殆どがトホホ内容だ。または、ちょっとお茶目に描こうとする。いかつい顔してるくせに逃げるなよ、と思う。
編集すると見えてくるものありまして、撮ってるときから思ってはいましたが、選挙を撮ってはいたものの、これは友情のドキュメンタリーだなと。バンクーバーから選挙のために帰国したり、神戸から、栃木から、このためだけにやってきてしまった。この候補者の所謂ブレーンは大学教授が多いんだけど、メディアの人たちが特定の人を応援することを避けるのに彼らはメディアの人たちと同様にフラットであるべきだろうに、あえて支持する。
そういう距離、勇気を出させるのものは友情ではないかと思ったのです。勿論候補者の考え、政策の良さもあると思う。でもそれを理解する切っ掛けは友情だと思った。
結果として二期、三期目と投票率の下がる中で得票数を上げてトップ当選だった。地盤も鞄も、看板も無い、選対メンバーの殆どが素人。この状況でこの結果はマンガのようだと思う。何の取り得も無いおっさんが一人で作ってる自主制作には勿体無い状況だ。本当に感謝しか言葉が無い。
それでも全く本人含む選対にはまるで余裕が無く、結果としては落選した若手新人候補たちをライバル視し(軽くですが)一応ポーズではなく必死だった。一応というのは、実際どこまで本気でどこまで作戦なのか、僕にとっては彼が政治家としての能力に長けすぎていると感じるので分からない。でも選挙運動期間中の彼の演説中や街中で握手をする表情はいままでどこでも見た事の無いくらいに真剣だった。こんなに真剣なまなざしを見たことは無い。
大した取材も撮影も出来なかったけど、この真剣な表情と友達が応援する気持ちをある程度撮れたつもりでいる。でもやっぱり迷いはあって、それは僕がこれを撮って良かったのかと言うこと、そこに意味はあるのかということ。本来なら政治とは!とか選挙とは!とか、世に問うべき何なんだろうけど、そういう気も政治に対する興味も知識としては増えたけど、それ以上は無い。だから未だに自信は無い。
次を撮れるならこれは三部作の真ん中の二作目になる。でももう無いかな。意欲はあってもお金と体力が無いからね。