青龍山

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企画ものを考えていて愛知県犬山市の言い伝えを調べていまして、その中に青龍山についてのものがあります。この話以外も含めてなんですが、短いことと話に起伏がなく、物語の整合性などもとても雑なので大幅に内容を追加して作り直しました。結果としてほぼ違う話になっています。

その昔、青龍山と呼ばれる山がありました。この山を頂く村は土地が荒れ、作物も思うように育たず、病も蔓延する衛生状態の悪い状態が続きました。

かつてはこの村も青龍山から続く大きな池があり、その水は絶えることがなく、湧き出た水を飲むとあらゆる病を治し、幸運をもたらす力があるとされ神聖に扱われていました。何より青龍山にはこの土地を守る龍神がおり、池を含む青龍山は五穀豊穣や天候の神として信仰の対象になっていました。麓には神社や祠があちこちにあり龍神を祀りました。

青龍山に修行に来る僧侶も多くいました。とても豊かな村でしたが、ある時大きな竜巻がやってきてみるみうるちに山は荒れ、池の水もどんどん減り、村もその影響で荒みました。池の水が枯れてしまった頃には青龍山の言い伝えも忘れられていました。

疲弊した村に一人のお坊さんらしき人がやってきて青龍山に向かいました。とても良いとは言えない見なりで村人たちは怪訝な顔で見ていました。

お坊さんは朽ちたお寺を手直しして修行を始めるようでした。たまに隣の町へ出かけるお坊さんを挨拶をする村人たちは親しくなり、文字の書けない村人たちの代筆をするようになりました。村人たちは大変感謝してお礼をしたいと申し出ますが、お坊さんはいつもはぐらかします。

お坊さんは実はお坊さんではなく、近くの街を荒らす盗人でした。山に身を隠すためにやってきたのです。袈裟も町のお寺で盗んだものです。

盗人はある天気の良い日の暇つぶしにお坊さんの真似でもしようと瞑想をしました。慣れていないので次第に眠ってしまいます。その夢の中で霊的なものに話しかけられます。何を言っているのか分からないまま、目が様ました。手には青く光る鱗のようなものが一枚ありました。

お坊さんのふりをした盗人は村に降りるたびに村人たちに相談を持ちかけられます。娘が酷い高熱で苦しんでいる。なんとかしてもらえないかと。

盗人はかつて武士だったので字は書けますが、医者の心得は皆無です。誤魔化して逃げることもできましたが村人があまりに必死なので仕方なく娘の額に手をかざして念仏を唱えるふりをしました。すると、かざした手がほんのり青く光りました。しかし症状に変化はありません。盗人は白湯でも飲ませて安静にしていなさいと、よくありそうな事を話してそそくさとその場を離れました。

次の日、娘は昨日までが嘘のように元気になりました。町から帰ってきた盗人に娘が回復したことにお礼を言いました。

それからたびたび盗人は村人たちの病気などを治しました。この力を”仕事”に使おうとしますが、全く力は発揮されません。その割には街で”仕事”をしても誰にも見つからずに山に帰って来れました。

その後も盗人は青い鱗の力を使って村人の病などを治しました。そろそろ山を出ようと思っていると、盗人の元に村人たちがやってきて自分たちを助けてくれたお礼にお寺を建立したいを申し出ました。盗人は断りますが村人たちは下がりません。渋々申し出を受けることにします。

建立する場所は盗人がここが良いと適当に指した岩の隣になりました。その岩を盗人が持っていた棒でこづきました。亀裂が入ったと思ったら勢いよく水が吹き出し、それと共に龍が天に登りました。水はどんどん吹き出し、岩の前で大きな池になりました。龍は青く光る鱗に覆われていて、天に登る様は稲妻が立ち登るようでした。

この池はかつてあったとされる池同様に何時も枯れることなく、村人が飲めば病気を傷を洗えばたちまち治してしまいました。農作物の病気からも守り、五穀豊穣をもたらしました。池は青龍池と呼ばれるようになり、山とともに再び信仰の場になりました。豊かになった村では毎年青龍池の近くでお祭りをはじめました。もちろん、村人たちはお坊さん、のふりをした盗人のために立派なお寺を建立しましたが、盗人は村を出てすぐに捕まり、打首になりました。

END

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