工場街のロボット

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街は貧しかった。
元々小さな工場が集まった、自然発生的な工業地域をなしていた街で、それなりににぎわっていた。
sketch643十数年前の天災で町の周りに大きな堀のような池が出来てしまい、孤立してしまいました。
堀が河か湖かというくらいに大きく、簡単に埋め立てられるものではありませんでした。
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何度か埋め立てを試みましたが、いくら土を入れてもあっという間に水かさが増していきました。
外への行き来は一本の橋だけ。この橋も町の有料者たちが高い通行料を取り立てていました。
天災直後の町の人々にあった復興への情熱は徐々に薄れていき、国からの補助金だけを頼るようになっていったのです。
町の有力者たちはこの補助金を目当てに私腹を肥やすようになり、町はどんどん貧しくなっていきました。
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孤立した町は五つの小さな町が集まって出来たものでした。この五つの町で対抗のプロレスをやることを思いついたのです。
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ここに町工場たちならではの案として、それぞれの町で巨大ロボットを作ることになりました。幸い、それぞれの町がロボットを作るだけの材料はありました。
ロボットの制作とプロレスの運営には試行錯誤の連続の中、何とか形になっていきました。
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問題の一本だけの通行料の高い橋はとても通ることが出来ないので、五体のロボットを使って自分たちでもう一本橋を作りました。町の人たちは一生懸命でしたが五体のロボットと一本の橋を作るだけが限界でした。
そして当日、客は貧しい町の人たちばかりでしたが、皆楽しく過ごすことができました。
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これが、堀の外の人たちにも知られるようになり、一本だけの橋を渡って、プロレスの開催される日だけは大勢の人々が訪れるようになりました。二回目、三回目と続く頃には町はかつての活気を取り戻しているように見えました。
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しかし、町の有力者たちはこれが気に入りませんでした。このロボットプロレスに全く関わることがなかったからです。またロボットプロレスで町が復興してしまうと補助金が打ち切られてしまい、自分たちの私腹を肥やすことが出来なくなるからです。
町の有力者たちは町の祀る牛に祈りと呪いをかけるようになりました。神頼みだけでなく、ロボットプロレスを運営している人たちを謂れの無い罪で次々と捕らえていきました。
それでも残された人々でロボットプロレスを開催するために頑張っていました。
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職人の子どもたちが見よう見まねでロボットを治して操作しました。どういうことか子供たちにはロボットを動かすことが出来ました。再び動き出したロボットたちは牛を追い詰めました。それでも牛には敵わず、五体のロボットは堀に突き落とされてしまいました。手立ての無くなった町の人々が今度は祈りました。祈りが届いたのかロボットたちが落ちた堀の辺りが赤く光り、鉄で出来た龍が現れました。龍はものすごい勢いで牛を倒しました。そしてゆっくり堀へ戻り、掘りの中をグルグルと回りだしました。すると堀の水はどんどんと蒸発していきました。水が全部なくなった頃には鉄の龍は五つのロボットに分離していました。
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しばらくして堀は外の町の人たちと協力して埋め立てることが出来ました。町はまた昔のような活気を取り戻していきました。ロボットプロレスも町の伝統行事として毎年開催されています。

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