赤い花

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今も昔も治水は一大事です。
テクノロジーのかけらもない頃は祈るしかありませんでした。
当然のように祈っても堤防すら作らないのでは神様も願いは叶えてくれません。
毎年夏の終わり頃には台風がやってきて、村の家々も畑もすっかり壊していきました。

そのせいなのか何なのか、村には目が一つしかない、口が無い、手が無い、脚がない、無い無いばかりかと思えば、目が三つ、指が六本、いつも笑ってばかりや突然どこかへ走り出すものなど何とも変わった子どもがたくさん産まれました。村の人々はこれを天災のせいにしました。
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何とも変わった子どもたちは村を治める殿様が村人たちから安いお金で買い取るようになりました。
殿様は村人たちの話をよく聞き、好かれていました。
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村人たちは何とも変わった子どもたちを金のなる木と呼ぶようになりました。
何とも変わった子どもたちは、殿様が村の一角に作った家に囲われて大事に育てられました。
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子どもたちの中に一人の女の子がいました。女の子は一日中何も話さずに空の一点を見つめて静かにじっとしていました。
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村人たちにカネは入りましたが、天災は未だに収まりませんでした。村人たちは集まって考えました。何とも変わった子どもたちを人柱にして堤を作ってはどうだろうか。彼らは金のなる木だ、そんな彼らを堤にしたらきっと天災から免れるだろう。次の日殿様に提案をしました。
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すると、それは良い考えだと殿様は言いました。殿様も増え続ける何とも変わった子どもたちをどうしたものかと困っていました。堤はどんどん作られていきました。そして何とも変わった子どもたちを人柱にする日がやってきました。
子どもたちは次々と埋められていきました。空を見つめている女の子も埋められました。日ごろ騒がしい子どもたちもこの時ばかりは異常な事態に黙っていました。

村人たちは殿様に「これで天災はなくなります」といいました。
すると空をずっと見つめている女の子が突然、殿様や村人を強い表情で睨み「違う!」「これはお前たちのエゴだ!」といいました。
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殿様や村人たちはびっくりしました。しかし、女の子を不気味に思ってとっとと埋めてしまいました。何だか変わった子どもたちを人柱にした堤のおかげで一度か二度の天災は免れました。堤には知らないうちに赤い花がたくさん咲くようになりました。まるで、何だか分かった子どもたちの生まれ変わりのようでした。そして、何度目かの大きな天災で村は全部流されてしまいました。
それでも堤は残り、たくさんの赤い花は毎年夏の終わりになると咲き続けました。
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