アードホックスは都市から遠く離れた街だ。目立った産業も無く、やせた小さな牧場と月に二回停車する長距離特急の乗客が途中下車のための飲食店くらいが、ポツリポツリと開いているくらいだ。それでも街が維持できるのは隣町の鉱山へ出稼ぎに出ているからだ。
だから街には老人と子どもしか居ないように見える。
アードホックスには強盗が多発していた。
強盗は鉄で出来た鳥から落とされた卵型のカプセルから起動するロボット集団によって行われていた。鉄で出来た鳥は比喩ではなく、本当に鉄で出来た鳥型のロボットとでも云うようなものだった。
強盗ロボが仕事をしている間、鉄の鳥はその上をゆっくりと旋回している。強盗ロボは右腕のマシンガンを構えてロボットであるという理由以上に機械的に行動し、左腕の掃除機のような機械で次々とカネを吸い取って行く。仕事を終えた強盗ロボは、ロケットに変形して鉄の鳥へまっすぐに飛んでいった。
これらの全てが終わると鉄の鳥は静かにどこかへ飛んでいった。
街の人々は何も出来ず、ただ立ち尽くすばかりだった。
ある日、新型のディーゼル特急が街に停車し、一人のセールスマン、後藤が途中下車した。
バーで飲んでいると、、鉄の鳥について話しているのを耳に挟む。話に首を突っ込むと街の人々はことの顛末を話してくれた。
その話の半ばで鉄の鳥がやってきた。奇妙で耳障りな鳥の音は鉄の鳥がやって来る合図の様になっていた。
強盗ロボが落とされると保安官たちが立ち向かう。しかし、右腕のマシンガで全員倒されてしまった。なすすべも無い中でも街の人々は必死に強盗を鉄の鳥をやっつける相談をする。
そこにさっきのセールスマン後藤がやってきて、強盗撃退用ガードロボットのバスタークを売り込んできた。もう、何にでもすがりたい街の人々はバスタークを欲しがるが買える金額ではなかった。そこで後藤はレンタルはどうかと勧めてくる。バスタークは強力なので一度の迎撃で強盗ロボなら、ほぼ全滅させられるという。街の人々はレンタルすることにした。
バスタークはあさっての貨物列車でやって来る。期限が来るか成果が出たら引き取りに来るのよろしくどうぞと言ってディーゼル特急に乗って去っていった。
あさっての朝、貨物列車でバスタークがやって来た。バスタークはややくたびれた外観だったが、人々の命令で起動し、力強い印象を見せた。
バスタークを銀行前に配置して、すっかり定期便のようにやって来る鉄の鳥を待った。
待つと意外と来ないもので、街の人々は待ちくたびれてしまった。一時、空が静かになると対に飛来した鉄の鳥からたくさんの卵が落とされた。
卵が着地するとその衝撃で割れ、強盗ロボが次々と起動する。行動を開始する強盗ロボ。すかさずそれを阻むバスターク。
強盗ロボがバスタークを攻撃するが、難なくかわし、ロケットパンチを連射する。
ロケットパンチはバスタークの腕の製造室で瞬時に作られる。
かわすだけでなく、強盗ロボのマシンガンはバスタークには殆ど無効で、当たっても弾かれてしまう。
そうして強盗ロボは次々と倒される。
バスタークは弾切れをおこした強盗ロボを掴んでひねり潰していく。数少なくなった強盗ロボはロケットに変形して鉄の鳥へ戻ろうとするが、頭上で旋回する鉄の鳥をバスタークがロケットパンチの連射と目から発する破壊光線で撃墜してしまう。
行き場をなくしたロケットに変形した強盗ロボはお互いにぶつかって自爆する。
バスタークのロケットパンチや強盗ロボのマシンガンの弾で、銀行だけでなく、街一帯に二次被害が広がった。
強盗ロボが一掃され、街の人々は一応の安心を取り戻した。問題が解決してしまったバスタークはたいした理由もなく街の人々へ攻撃を始めた。
目から破壊光線、胸から火炎放射をして街を破壊する。ロケットパンチも連射だ。
人々は家を焼かれ、街の広場へ半ば追い詰められるように集まっていく。
長距離特急の線路を跨いでバスタークが歩いてくる。線路を踏んだ瞬間に、漫画ならではのタイミングで新型ディーゼル特急列車がやって来てバスタークを跳ね飛ばす。バラバラになったバスタークは沈黙する。
列車が停車し、セールスマン後藤が笑顔で下車する。町の人々は後藤をにらんだ。
END