黒い雨(1989年 日本 監督/今村昌平)
見た。辛さがこつこつと打ち込まれるローキックのように溜まってくる。絶望や不安がたくさん登場するのに悲劇でもなく、まあ楽しくもないが。かといって懸命に生きる人々なのにそれが押し付けじゃなく。ラスト近くの遂に病気が発祥した矢須子を悠一がかばって歩き、直後に車のエンジン音で発作が起きる悠一を更にかばう矢須子の二人が地面をのた打ち回るシーン、さかのぼって原爆投下直後の街で無名の兄弟がケロイドが酷くてお互いに外見で確認が出来ず、名乗りあうシーンが、僕には幸せを感じる場面だった。バスのエンジンを止めさせてみんなで押すシーンの中で乗客と話すカットも印象に残った。全然楽しくないし、幸せといってもハッピーでもなく、感動シーンでもなく、後者に至っては物語とは直接関係が無い。彼らは経済的に成功もしないし、特別明るい未来が待っているわけでもない。この映画の中では戦争の被害以外に認知症やそれらを踏まえた風評被害やいいこと一つも無いんだけど、幸せを映像で描いていて凄いなと感想を持ちました。 最近の人気映画は難解であっても勝利が幸せに繋がる話になっていて、そうでない場合は、悲劇を同情によって共感wさせる方式になっている。出来るだけ大勢の人に売れなければならないので致し方ない部分ではあるが。
この映画を見て、原爆はダメだ、戦争はよくない、噂で人を決め付けてはいけないとか感想を持たなくてはならないかもしれないが、そうじゃない部分の感想を持ってみたんだよ。