さよならテレビ: ドキュメンタリーを撮るということ 阿武野 勝彦
平凡社新書 2021/6/17
感想文はしばらく書いていなかったね。
東海テレビのドキュメンタリー映画のプロデューサーによる、2021年現在(読了は2023年3月です。二年かけて読んだんじゃなくて2023年にやっと手にとったってこと。)までに公開された映画の解説で、表題のさよならテレビだけの話ではないです。前半は『人生フルーツ』の件がとても長く、この映画が僕はあまり好きではないので読み進めるのがとてもつらかったです。『さよならテレビ』については意外とあっさり書かれていて拍子抜けしてしまいました。『さよならテレビ』は面白く見れましたが、フェイクドキュメンタリーの感じがとてもずるく感じていて、それも面白いと思っていますが、そのずるい部分があまり解説されないなあと気にかけています。すべてのドキュメンタリが正しいことの主張である必要はないですからね。
『人生フルーツ』があまり好きではないのは樹木希林さんをとても持ち上げていて、その人の素晴らしさと映画が全部イコールになっていて、映画自体ではふわっとした作りで殆ど何も描いていないのに全肯定に見えたからです。物語がほぼ見えない感想を持ちました。しかし、本としてはこの辺りを乗り越えないと後半が単に字を追うだけになってしまいます。自分としてはシリアスな題材を扱うと勝手に思い込んでいた東海テレビのドキュメンタリ映画の全体像は後半で読めるからです。また、樹木希林さんとの関りも理解できる章があり、『人生フルーツ』をここまで大切にしていることが理解できます。だからと言ってよいとは思いませんが。
その後半にNHKの取材班との関りが描かれていて、なかなかなねつ造の塩梅。これ見よがしに作っているわけじゃないんだけど、映像として見た目をよくしたい発想が強く、小さなことでは主題とほぼ関係がない家具などを絵として見栄えの良い位置に置きなおしたりとか、撮るなと言われている関係者にカメラを向けて撮影したりとかね。まぁ、わかりやすいし、視聴者の感情を揺さぶるには簡単だからね。ただやるなって言ってんだからとりあえず守れよと思うのは僕も経験があるから。NHKはどの部署かはともかく、割とねつ造したがるっぽいね。とりあえず警戒はした方が良いと思いました。
で、最後に樹木希林さんについて登場します。ドキュメンタリ映画の制作を通じて樹木希林さんとはとても近い関係だったようで、大御所ならではの若干困ったこともあったり、とても多くのことを教えてもらえるようだったのが分かります。